新社会人の片道2時間15分通勤の記録

No.0 小旅行

最寄りのバスの始バスに乗ると青々とした田んぼ道を抜けていく。 踏み切りをこえ、もっと奥へ奥へ、そうすると、見えてくるロータリーが終点だ。

 

階段を登り、改札を抜けて、ホームに降りる。人が並んでいないところを目指し、並ぶ。電車に乗り込み、途中で降りそうな人の座席の前にたつ。重たいかばんは母からのお祝いだ。まだ下には置きたくない。30分手すりを持ちながら揺れていて、「いったい何をしているのだろう」と、悲しくなってくると、さっ乗換駅に到着だ。

 

ここは都会。ホームがいくつもいくつもあって、降りる階段によって乗り換え方が変わってくる。毎日景色が違って見えるから不思議だ。入社式の日は、ホームへの入場が規制されていた。えらい駅やなーとおもったのだ。人の流れに乗りながら、なんとか目的のホームへ。

 

そこにつくと、5分待つことなく、次から次へと電車がやってくる。そこで溢れかえる人たちとおなじように、電車にすいこまれる。ここではな悲しくなる暇のない、あっという間に乗換駅だ。

 

ここらへんで時計は7時をまわり、乗り換えた電車には学生が溢れる。foresta, 4ステップ, シス単, プリント, たくさん懐かしい参考書が溢れる。もしあのとき、あと一時間勉強できていたら、今は変わっていたのかな、、、よからぬことを考えはじめたとき、車窓がどこか地元に似つかわしい景色に変わる。 あっ、席があいた。そこでそっと本をひらく。電車に揺られてもうすこし、もうすこし、もうすこし。電車ががらんとしてきたら、降車駅だ。

 

やりたかった仕事をできる会社から内定をもらい、実際にそういう部署に配属された。部署の人たちもいい人だ。お局さんのような人がいるわけでもなく、しょうもない嫌がらせをするようなこともなさそうだ。文句をいってはならない。大手企業の内定ではなくて、職種で私自身が選らんだのだから、文句を言ってはいけない。そうは思うが、通勤時間のどこかで悲しくなる。

 

「会社を選ぶときには考えなかったのか。」歓迎会の席でかけられた言葉にはどう返したらよかったのか。何度も聞いていた、通勤時間が二時間を越えたら社宅に入れるという話には、業務に支障を来す場合という注意書きがあるのだと知った。まだ見習いの分際の私には該当しないのだと知った。 でもそうはいっても、そうはいっても、4回の乗り換えも、片道二時間15分の通勤時間はやはり日常生活に重くのし掛かる。

 

きっとこの生活には近い将来、終止符を打つことになる。社宅に入るという形か、100%自らのお金で家をかりるか、体調がもたなくて転職するか、運命的な出会いをして家をてに入れるか、それはわからない。でもこの生活がずっと続くと思うと、明日電車に乗ることすら私はできないだろうから。 少なくとも1年したら終止符を打とう。それまで残そう。 毎日の小旅行の記録を。

 

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